オグプロ?

日本語ラップ カレー Mr.Children 煙草 が好物です。

馬天漁港

 

 ミキヤという友達と毎日のように遊んでいた。お金が全く無かった僕達は散歩したり、ドライブをしたり、公園で話したりと平成の世とは思えないような日常を送っていた。お互いに気を遣わずに過ごせる友達。真夜中12時を過ぎた時計を見て「もう今日だな」と平凡なセリフを容易く吐ける。良いのか悪いのか分からないけれど、一度も喧嘩をした事が無い。俺はなんとなくミキヤの考える事は理解出来るし、ミキヤも俺の考える事はなんとなく分かるみたいだった。

 僕は人が嘘をついているかどうか、目を見たらなんとなく分かる。でも"なんとなく"であって、絶対という訳ではない。でも、いつからかミキヤだけは目を見ると嘘かどうか確実に判断出来るようになっていた。仲の良い親友達と人狼ゲームをした時も、ミキヤだけは推理せずに人狼かどうか分かる。嘘をついていない時と何がどう違うのか説明は出来ないが、嘘だという事は絶対分かる。ある日「彼女が出来た」とミキヤが僕に話してきた。「ふーん、誰?」と話しながら目を見ていると嘘をついているのが分かったので、「彼女出来てないだろ」と聞くと彼女が出来たのは本当のようだった。「じゃあそんな好きじゃないだろ」と言うと、答えを濁していたので正解だったらしい。

 ミキヤは僕がタイ旅行に行ったほんの数日の間に死んだ。最後にテレビ電話をした時に、「今度みんなでタイに行こうぜ」と問いかけると「いいね、楽しそう。行こう!」と言っていたが、確実に嘘をついていた。アレは絶対嘘だ。その時は、ただタイが嫌だと思ってるのかなぁと考えていた。どうしてもあの日から考え込んでしまう。死ぬのは怖い。とても怖い。でもミキヤは自殺とは根本的に違うのだ。そして決まって僕は自分の存在が恥ずかしくなる。のうのうと生きていやがると思う。

 何かの正義を強く主張して、ちょうど良い案配の潰せる小さな悪に対して厳しく向かって行く団体の臆病な英雄に気持ち悪さを感じて仕方がない。まるで俺みたいな奴だなと思う。都合の良い正義だなと思う。絶対に勝てないモノに真っ向から立ち向かって殺された人の方が格好良くて、憧れる。僕は死ぬのが怖いし、誰も僕の命など欲しがっていない事は重々承知だ。

  タイから家に帰って来たけど、家でじっとしていられなかった。かと言って、死んだ友達の顔なんて見れない。今までのミキヤの思い出が、一瞬でその顔に奪われてしまう気がするからだ。

 外国のラッキーストライクは少し味が違う事を伝えると、一箱だけ残してて欲しいと言っていたので残しておいたタバコを一箱だけ海にぶん投げた。隣で釣りをしているおじさんに怒鳴られたが、聞こえないフリをしてそのまま歩いた。近くのコンビニでコーラを買った。「コーラ飲んだ後って歯磨きした後みたいに歯がギシギシするから好きなんだよね」と聞こえてくる。泣きそうになったので大音量でエレカシを聞くと一緒に歌ってくる。タバコを吸うと「煙っていつの間にか透明になるよなぁ」と聞こえてくる。

 気がつくと煙はいつの間にか透明になっていく。

月夜の馬天漁港が綺麗だった。

 

 

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